風邪は治ったはずなのですが、
まだ熱が残っているのか？・・・
突拍子もなく、厨房で『セクシーな料理』なんて言葉を口にしていました。
おそらく・・・
「気分屋がまた戯言を・・・」なんて
思われている可能性大です。
自分の作った料理がどうなのかというのは
都合良くそばに置くとして・・・
料理の美味しさにはいくつかの種類、もしくは段階があるのかなと思っています。
１つめは『味が美味しい』お料理・・・
作るからには当然の目標かとは思いますが、
食べてもらった人に
“酸味・甘み・苦味・辛味・旨み・塩加減”や
そのバランス、組み合わせなど・・・
舌で「美味しい」と感じていただけるお料理です。
作り手側から言うと、
その料理のレシピや手順が頭に入り、
何度かの失敗も経て、ちょっとしたコツをつかんで
ある程度自分の段取りで
その料理が出来るようになった時に、
味のいいお料理が出来るようになるのかなと思います。
２つ目は『香りも美味しい』お料理・・・
味わいだけでなく、
“あつあつ感”、“ひんやり感”などの温感や、
のど越しや舌触りなどの食感
さらには、香りや“回香”と呼ばれる香りの余韻などの嗅覚や
“見た目にも美味しそうな”視覚等など・・・
五感で美味しいと感じていただけるお料理もあるかと思います。
こんなお料理が出来るということは、
そのお料理の手順などは、完全に自分にフィットして、
「こうするから、こうなる」とか、
「このタイミングでこれを使うから、こうなる」とか、
「こうするために、これをする」的な事柄もしっかりと頭に入り、
様々なシチュエーションでの、数多くの経験は、
その作り手に、その料理に対する大きな自信をもたらしていると思われます。
３つ目は『イメージも美味しい』お料理・・・
昔聴いた曲を聴くと、その頃の楽しい思い出がよみがえるように・・・
おふくろの味に懐かしさを感じたり・・・
ハウスのシチューを見て、緒方直人の出ていた北海道の暖かいログハウスでの、暖かい団欒の風景が思い浮かぶように・・・（ちょっと違うかもしれませんが！？・・・）
そのお料理が、“食べてもらう人が持っている”何らかのイメージを思い浮かべさせる、
または、また食べたくなるような、ふと思い出してしまうような、いい印象を与える料理もあると思います。
そんな料理を作った作り手には、
おそらく、その人の中に、その料理に対する明確で詳細なイメージ、そして、その人なりの料理に対する思い入れが、形になっているのではと思います。
賄いで食べた師匠の作った料理に、強烈な印象を受けたとか・・・
食べに行ったときに、忘れられないぐらいに美味しい料理にめぐり合ったとか・・・
たとえば、畑で収穫したばかりの野菜の、正真正銘の新鮮な味を知ったとか・・・
そういうような、頭だけでなく、体で感じたり、覚えたりしたイメージや印象が、
いざ自分が作る時に、自然と、または無意識に出てくるのかも知れません。
さらには、『興味も美味しい』お料理・・・なんていうのもあるのではないのかな？？と、思ったりします。
「これって何で作ってるの？」とか、「これってどうやって作ってるんやろー」と、
料理自身に興味を持ってもらえるお料理や、
「この料理は品がいい」とか、「この料理が豪快だ」とか、「この料理は官能的だ」とか、「優しい味がする・・・」など等・・・
そのお料理自身が、そのイメージや印象を食べてもらう人に、有無を言わせず訴えかけるようなお料理も、
ある意味、大いに興味を引いているお料理と言えるのかなと思います。
不思議なもので、
ある料理を作るということが、しっかりとその作り手のものになった時に、
その料理には、その作り手の性格や、その時考えていること、スタイル等が滲み出て来るような気がします。
もしくは、作り手が意図的に、その料理に対するイメージなどを創り込んだり、表現したりしているということがあるやも知れません。
勝って知ったる友達、または彼女・彼氏の作ってくれた手料理のなかに、その人の性格を垣間見ることとかありませんでしょうか？
そういう部分というのは、みんながよく作る、基本と言われるようなお料理で、特にわかりやすく表れるような気がします。
例えば、『セクシーな焼売』
やっぱり熱が・・・と自分でも思わないでもないですが！？
そんなのがあってもいいんではと思ったりする時があります。
焼売は包む（握るともよく言いますが）のはそんなに難しくありませんが、
それこそ、人によってその包み姿はいろいろ出来てきます。
ある人の焼売は、腰をしっかり落としたドッシリした姿に・・・
ある人の焼売は、ふくよかで、柔らかな雰囲気の姿に・・・
またある人の焼売は、立ち姿がスラッと、たおやかさを感じさせる・・・
チャイナドレスを着た“見返り美人”のような焼売で、
それが湯気の立ちこもる蒸籠の中で、
整然と並べられている様に、何とも言えない美しさがあるように思う時があります。
（やっぱり、神の雫の読みすぎかもしれませんが・・・）
突飛ついでに・・・
『セクシーな炒飯』というのも、
あれば面白いかもと思ったりもします。
米粒のひと粒ひと粒が、ラードをまとって艶やかに、美味しそうな香りを立てていて、
テカテカしている油の量に、ちょっと体によくないんじゃないと思いつつ、今日は止めとこうかなと思うところに・・・
その油の香ばしい香りが・・・
「やっぱり私のことを食べたいんでしょ？？」
「体に良くないとかどうとか言ってるけど、結局は一歩を踏み出す勇気がないだけでしょ、意気地なし！！」
「今日だけは、我慢しなくてもいいのよ・・・」的な声が聞こえてきて・・・
米粒ひと粒ひと粒が、そんな声を投げかけてくる女豹に見えなくもないような炒飯とか・・・
ちょっと妄想が過ぎる感もありますが、
“夜中のこってりラーメン”にも通ずるような、
食べる側を挑発し、迷わすような炒飯とかがあっても面白いのかなと思ったりもします。
